〜前編のあらすじ〜
コツメシニアお手製の「鯖寿司」を食べた俺は、その夜激しい吐き気に襲われたが一旦はリバースすることにより、その危機的状況を脱したかに見えた。
しかし翌日朝になると、今度は陣痛のような胃痛に苛まれることになり、止むを得ず仕事を休んで「印西総合病院」へ向かった。
そこには大量のピアスをつけた謎のピアス医者が待ち受けており、彼の下した診断は「アニサキスかも。明日胃カメラ検査してみよう!」というものであった。
医者不足のため、明日にならないと胃カメラ担当がいないと知らされた俺は、陣痛のような胃痛に苦しみながらも、その日は病院を後にした。
時間のある方は前編を丸ごとどうぞ。
・壮絶・死闘!アニサキス vs 俺。生サバ食ったらヤツ(寄生虫)が居た!!【前編】
〜これより後編〜
注:現在も「印西総合病院」は絶賛開業中ですが、今回の記事に出てきた時の「印西総合病院」は経営破綻したため、現在の「印西総合病院」は完全な別法人です。
確認してはいませんが、おそらくピアスの医者もいないでしょう。
誤解のないように、くれぐれもお願いします。
「明日また来い!」とピアス医者により強制送還された俺は、時々やってくる胃の痛みに耐えながらも時間を持て余し、「アニサキス」のネットサーフィンに没頭した。
はっきり言って見ない方が良かった。
まず「アニサキス」は寄生虫だけあって、見た目がニョロニョロしていて非常に気味が悪い。
イトミミズを白くしただけのような姿は、100人が見たら99人は拒否するであろう気持ち悪さだ。こんなのが胃に入り込んだとしたら、悪さを働かない訳がない。
ウェブ上には、「アニサキスは胃壁を食い破ることもある」だの「アレルギーのショックを起こさせる場合もある」だの、危険なことばかり書かれていた。
もし「アニサキス」が俺の胃の中に巣食っているのであれば、今すぐに取り除きたい。
しかし、俺の選んだ「印西総合病院」は医師不足で明日にならないと胃カメラ担当医は来ない。
かと言って、いまさら他の病院に駆け込んで「アニサキスを取り除いてくれ!」と懇願したところで、もし「アニサキス」がいなかったらただの笑われ者だ。
あのピアスの医者の言うことを、そのまま信用するわけにはいかない。
結局、俺は陣痛的胃痛に翌朝まで耐え、なんとか再び「印西総合病院」へ胃カメラ検査のため訪れた。
胃カメラの場所へ行くと、待ち焦がれていた「胃カメラ担当医」がそこには居た。
しかし不愉快なことに「今日は、なんで胃カメラをすることになったの?」などと悠長なことを言ってきた。
まったく、この病院は人を胃カメラ検査に回しておきながら、何の引き継ぎもされていないとはどういうことなんだ?
すでに俺の体に異変が起きてから35時間が経過している。
体力も限界に近づきつつある中で、なんとか冷静さを装いながら経緯を説明すると「アニサキス?本当に先生そう言ってたの??まあそういうのなら念のため胃の中にいないか調べて見ましょうかね?」と半笑いだ。
かなり気分を害したが、俺にはもういちいち怒っている余裕はない。
ようやく胃カメラを行うためのベッドに横たわると、また「印西総合病院」はやってくれた。「何だ、この胃カメラ実施体制は?」俺はその布陣を目にしてあっけにとられた。
俺は人間ドックですでに何度か胃カメラを経験しているが、今回のような胃カメラ実施体制は初めてだった。
俺の知っている胃カメラ実施体制は、
・胃カメラを操る医者1名
・背中をさするなど全体をサポートするような看護師1名
という布陣である。
しかし、ここ「印西総合病院」の胃カメラ実施体制は違った。
・胃カメラ担当医の横についてサポートをする係1名。
・俺の背中をさすって患者をケアする係1名。
ここまではいい。俺の良く知っている布陣だ。
しかし、それだけではないのだ。
・俺の足をさする係1名。
・俺の手をギュッと握りしめる係1名。
なぜ足をさする必要がある?
そして手を握るの係!なんじゃこれ?
言っておくが、これ「全く盛っていない」。
嘘だと思うだろうが、嘘じゃない。誇張もしていない。本当に手を握りしめる係がいるのだ。
医師不足を嘆いているはずの病院で、一人の胃カメラ検査に4人の看護師が付きっきりになる。
何かがおかしい。実際、数ヶ月後に民事再生適用の申請してるから、やはり正解ではなかったのだろう。
兎にも角にも、大勢の看護師のサポートを受けながら、俺のための胃カメラ検査が始まった。
何度経験しても、胃カメラの苦しさは修行としか思えない。
なぜだろう、胃カメラをやると「涙が止まらなく」なるのは。
しかし今回は、手を握ってくれている看護師を中心に、異常なほどのサポートを受けている。
もうなるようになれ!とベッドの上でヒーヒー言いながら胃カメラを飲み込んでいた俺の耳元で、突如
「あれっ?あっ!居たぁ!」
と興奮気味に、胃カメラ担当医がアニサキス発見を高らかに宣言した。
その瞬間から、すべての状況が一変した。
まず、俺の手を握ってくれていた看護師は、自分の任務をすっかり忘れて
「先生、ホルマリン取ってきます!」と言い残し、どこかに消えてしまった。
他の看護師はモニターを見ながら「本当に居た!」「私、本物初めて見た!」「うわぁ!なにこれ」などと好き勝手なことばかり口走っている。
さらにどうでもいいことに、胃カメラ担当医は「これからそのままアニサキスを取り除くが、そうなると手術になるため費用が結構高額になるかも」といった趣旨のことを、胃カメラを口から突っ込んだままの俺に話しかけてくる。
「高いなら、他の店(病院)を探します」とか言えるはずもないのに。
そのうち、ホルマリンを手に携えた看護師が戻ってきたため、無事に俺の中にいたアニサキスを取り除き、ホルマリン漬けにすることに成功した。
ようやく、2日近くに渡る「アニサキス」との戦いは、ここに終止符が打たれた。
手術後、胃カメラ担当医を始め看護師の面々から俺に対して
「かなり胃が痛めつけられている。よく昨日からずっと我慢できたものだ」と賛辞の言葉が贈られた。胃カメラやる前には、俺の話を信用せずに半笑いを見せていたのが嘘のようだ。
また、開業1年程度(数ヶ月後に破綻するのだが)の「印西総合病院」で初の
「アニサキス患者」の称号を得た。
全然嬉しくないと言ったら嘘になるが、欲しいか?と問われれば別にいらない称号だ。
「アニサキス」との戦いの後、再びピアス医者を尋ねると「昔、漁村で診察をしていたことがあり、そこで多くのアニサキス患者を見てきたので、今回もすぐにピンときた」らしい。
ピアスだらけのとんでもない風貌のくせに、俺にとっては紛れもない恩人となった。
ありがとう、ピアス医者。
俺は、ピアス医者に謝辞を述べて、帰路に着いた。
そこには、「アニサキス」と戦う前の平和な日常が俺を待っていた。
以上
〜エピローグ〜
戦いを終えて家に着いた俺は、体調もすっかり回復したので、改めて今回の諸悪の根源となったサバを確認してみることにした。
念のため残しておいたパッケージを確認すると、そこには「生サバ(天然) 宮城県産」と大きく書かれていた。「冷凍」の文字はどこにもない。
「アニサキス」は48時間程度の冷凍、または加熱で死滅する。
店で売られるシメサバや鯖寿司は、まず「冷凍処理」されたものだ。
諸君、生サバは大変美味しいが、やはり生はやめておいた方がいい。
尚、店で出てくるサバは大抵冷凍処理されているので、食べても大丈夫だろう。
注:現在も「印西総合病院」は絶賛開業中ですが、今回の記事に出てきた時の「印西総合病院」は経営破綻したため、今の「印西総合病院」は完全な別法人です。
確認してはいませんが、おそらくピアスの医者もいないでしょう。
誤解のないように、くれぐれもお願いします。